
皆さんは海外のミステリと言えばどの国を思い浮かべますか?
本場イギリス、エンタメ性に富んだ作品が多いアメリカ、世界で爆発的にヒットした北欧ミステリのスウェーデン・ノルウェーなどいろいろあると思います。
ですが、ホットなミステリを生み出している国はほかにもあります。そこで今回紹介するのがデンマーク発の傑作ミステリ特捜部Qシリーズです!
特捜部Qシリーズ
特捜部Qとはどんなシリーズなのか?
特捜部Qシリーズはデンマークの警察小説で、未解決事件を専門に扱うQと呼ばれる特捜部のメンバーの活躍を描いた作品です!
作家ユッシ・エーズラ・オールスンは、もともとはコミックやコメディの研究書を執筆していた人でしたが、のちにフィクションに転じます。
そして、2007年にシリーズ1作目『特捜部Q-檻の中の女-』を上梓します。特捜部Qの面白さは、シリアスと笑いの緩急にあります。
特捜部Qは、主人公のカール率いる特捜部Qの活躍を描いたパートと、犯罪者が犯罪を行うパートが交互に描かれながら物語が進んでいきます。
犯罪者のパートはスリル満載のシリアスな場面ですが、特捜部Qのパートでは物語の展開がまだ穏やかな序盤から中盤にかけては、カールの日常が描かれることが珍しくありません。
カールは普段から不機嫌な警察官で、部下のアサドやローセ、上司や同僚、元妻や息子といった多数の人間に苛立ちを抱くのですが、それが実にユーモラスに描かれているのです。
人間関係からくる災難がカールに次々降りかかるのですが、その部分は読んでいてクスリと笑ってしまいます。
物語終盤になると緊迫感が増してきて、さすがにコメディもなくなっていきます。ですが、それまでの間はシリアスパートを読んだあとの読者の神経をほぐしてくれる笑いがあり、リラックスして話を読み進められるのです。

最新作『特捜部Q 自撮りする女たち』
特捜部Qシリーズの最新作は2018年1月に刊行された『特捜部Q 自撮りする女たち』です。2019年11月には文庫本が刊行されました。
最新作では、生活保護を不正受給する女性たちと、そんな彼女たちを憎悪するソーシャルワーカーを軸としたストーリーが展開されます。
特捜部Qの悪役は、これまではサイコパスだったり、強大な組織ということが多かったですが、今作は素人たちが犯罪を犯していきます。
素人の仕事なので、どこか行き当たりばったりな犯行が多く、読んでいておかしさを感じます。
先ほども述べたように特捜部Qシリーズはシリアスと笑いの緩急が秀逸な作品です。犯罪パートもコメディなら、全編コメディ色が強くなるのではと思っていたのですが、
さすがはオールスン!抜かりはありませんでした!
今作では特捜部Qのアシスタントであるローセの過去が明らかになります。これまでエキセントリックな言動を繰り返し、妹たちのふりをして仕事にやってくることもあったローセですが、そこにはゾッとするような恐ろしい理由があったのです。
『自撮りする女たち』では、ローセの過去を探っていくシーンがシリアスパートとなっているのです。
今までのシリーズ以上に、さまざまな人間の思惑が交錯する内容になっており、寝る間を惜しんで読み進めていきました。
ラストのシーンはついついホロリときました。
『特捜部Q 自撮りする女たち』は、シリーズ第7作目に当たります。
結構シリーズが出ていますが、求めやすい文庫本もあるので気になった人は手に取ってみてはどうでしょうか。
